大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和46年(オ)660号 判決 1971年11月11日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人黒田慶三の上告理由第一点一について。

上告人ら主張の贈与の事実は認められない旨の原審の事実認定は、原審で取り調べた証拠関係に照らして首肯することができ、原判決に所論の違法は認められない。したがつて、論旨は、採用することができない。

同二について。

亡金丸豊の昭和二三年末以降における占有をもつて、所有の意思をもつてした占有と認めることはできない旨の原審の事実認定は、証拠関係およびその説示に徴し、首肯することができ、原判決に所論の違法は認められない。所論は、原審の認定に反する事実の存在することを前提として、原判決の違法をいうにすぎず、論旨は採用することができない。

同第二点について。

民法一六二条二項の一〇年の取得時効を主張するものは、その不動産を自己の所有と信じたことにつき無過失であつたことの立証責任を負うものである〔最高裁昭和四三年(オ)第八六五号同年一二月一九日第一小法廷判決、裁判集(民事)九三号七〇七頁参照〕ところ、原審の認定した事実関係のもとにおいては、亡金丸豊が無過失であつたとは認められない旨の原審の判断は、正当であつて、原判決に所論の違法は認められない。したがつて、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岩田 誠 裁判官 大隅健一郎 裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三 裁判官 岸 盛一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例